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編集後記
崎田 隆夫
pp.94
発行日 1972年1月25日
Published Date 1972/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403108980
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早期胃癌の各型の診断はめぐりめぐって,遂に本号で平坦型Ⅱbがとりあげられるに至った.或る意味で,早期胃癌の診断はまず完成した形となり,それらは整理に整理を重ねられて,きわめて理解し易い内容となった.即ち完成という言葉が使われ得るわけであるが,勿論まだ今後に残る課題は幾つかある.そしてそれの最も重要な課題の1つが,このⅡbの診断ということになる.
ⅡaにしろⅡbにしろ,その凹凸が僅かとなってⅡbに近づくほど,その癌という質的診断はむずかしくなってくると一般論としていってよいであろう,X線,内視鏡の臨床面より,更に切除肉眼標本からも全く凹凸のわからないものを典型Ⅱbと定義しようと先般なったようであるが,臨床的に診断できないものを典型Ⅱbとして,それの診断にいどむのもよいであろう.現段階ではX線内視鏡とも,アレア(胃小区)の分析を進めているが,これは現在唯一のⅡbを診断し得る手段かもしれない.しかし,初期の胃癌はpeptic ulcerationの危険に常にさらされ,その成長の経過は必ずしも簡単な形をとらないと想像される.我々はこの意味で,従来よりはるかに多数例の臨床症例の観察に目を向けると共に,最近成功した実験胃癌を莫大に駆使し,胃癌の組織発生の解明の方向に進まなければならない.これがⅡbを解決する決め手ともなろうし,或は,治療から癌の予防という或る意味で,核心的な問題を生み出すことになるかもしれない.ともあれ,このⅡbという重要問題に真正面からとりくみ始めた本号の各論文を賞味していただきたいと思う.
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