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書評「胃・腸管運動の基礎と臨床」
川井 啓市
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1京都府立医大公衆衛生学教室
pp.972
発行日 1979年7月25日
Published Date 1979/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403107728
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興味深く,一気に読んだ.全篇を通して読者の理解を深めようとする著者の心遣いが感じられる.すなわち,豊富な文献をもとに,適確な記述のみを取り出し,平易にまとめてある.しかも各項目のとり上げ方にも一貫性があり,その内容も簡潔な説明と事実に裏打ちされた理論とでがっちり構成されている.本書はまた消化管運動と自律神経とに関する多くの日本人の研究を紹介しており,この方面のわが国の若い研究者に強い刺激を与えるであろう.それゆえ,自序にみるように,本書が若い研究者を対象としていることは全く的を得たものといえる.
総論では,従来,臨床家にとって難解であった用語や理論の説明に十分意が尽くされている.これも,この方面の第一人者である著者の豊富な知識と深い洞察力によるものであろう.特に各種の腸反射に関する記述や,消化管運動の調整中枢としての脊髄,脳幹,大脳に関する項目は著者の独壇揚である.さらに消化管運動と血行との関係にまで論を展開していることは,著者の今後の研究に読者の興味を向けさせるに十分であろう.
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