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書評「膵管像からみた膵疾患の臨床と病理」
有山 襄
1
1順天堂大学消化器内科
pp.347
発行日 1992年3月25日
Published Date 1992/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403106796
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素晴らしい本が出版された.池田靖洋教授著の「膵管像からみた膵疾患の臨床と病理」である.まず,本を開くとみごとな膵管像に感銘を受ける.著者が考案されたバルーンカテーテルによる膵管造影は,小さな膵管分枝の異常まで忠実に写し出している.よく造影された膵管像が丹念に読影されており,小さな分枝の閉塞だけで膵癌と診断された症例がある.膵管の十分な充満像がなければ,精密診断はできないことを教えてくれる.ERCPはX線検査であり,膵胆管開口部にカニューレを挿管する内視鏡的な手技は検査のごく一部で,主眼はきれいなX線像を撮ることであると著者が常に主張されているが,まったく同感である.
経過検査を行った症例が多いが,ERCPは楽な検査ではないので患者に信頼され検査が上手でないと,繰り返し検査を行うことに患者の同意は得られない.著者は外科医であるが,膵管異常例の診断に迷った経緯,手術した理由,手術に対する反省などがコメント欄に簡明に記載されており,真摯な人柄がよくわかる.診断困難例の手術は分節切除による迅速組織診断を行ってから術式を決定し,侵襲を少なくする努力がなされている.
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