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Current status of ileorectal anastomosis for inflammatory bowel disease: Khubchandani IT, et al(Dis Colon Rectum 32: 400-403, 1989)
約10年前,著者らは炎症性腸疾患(以下IBDと略す)の大腸亜全摘術後の回腸直腸吻合術について報告した.その後は,Kockらによる回腸瘻造設術がIBD患者の手術に,一般的に行われるようになった.今回,これらの術式を見直した.と言うのも,この施設では,肛門周囲に強い化膿性病変や癌の合併がなければできる限り直腸を温存する手術を行ってきたからである.対象は1959~1986年の間に,この施設で手術した210例のIBD患者.110例(66%)に回腸直腸吻合術が施行された.他の100例は部分切除などであった.回腸直腸吻合術を行った110例の内訳は潰瘍性大腸炎49例,Crohn病61例で,このうち不成功例は,両疾患合わせて11例(10%)のみであった.しかもそのうちの約半数の5例は残存直腸に発生した悪性腫瘍によるものだったが,3例が早期癌で発見されている.成功例99例のうち,半数以上の53例は,二期的手術であった.術死はなく失敗率も低く,定期的な残存直腸の検査を続けていけば,癌の早期発見も可能であった.IBDの再燃による失敗例は6例であったが,吻合不全の予測は直腸の伸展性を注意深く検査することが,経験上重要と思われ,特に適切なマノメトリー検査による適応の可否の決定が必要である.当施設での経験から,IBD症例における手術治療においては,多くの症例で回腸直腸吻合が可能で,患者のquality of lifeに深く関与するものであり,現在においても重要な手術法と考えられる.
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