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海外文献紹介「炎症性腸疾患における血小板機能異常」
豊田 英樹
1
1愛知県がんセンター消化器内科
pp.1174
発行日 1995年8月25日
Published Date 1995/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403105509
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本論文は炎症性腸疾患(IBD)発症における血小板の役割と,抗血小板剤による新しい治療の可能性についての総説である.血小板は炎症反応を修飾する様々なメディエーターを有すること,IBDでは血小板機能の充進,生体内での血小板活性化の指標となるβ-TGやPF-4の増加が報告されていること,Crohn病の病理学的検討で固有筋層レベルでの血管障害,巣状に認められる動脈炎・フィブリン沈着および多発する微小梗塞の存在が報告されていることなどから,IBDの発症に血小板が関与している可能性は高いと考えられる.IBD患者で血小板が活性化される機序としては,腸間膜の血管内皮障害や,活性化好中球や単球による影響などが主に考えられている.血小板がIBD発症に重要な役割を果たしているとすれば,抗血小板剤が有効であるはずである.実際,腸炎の動物モデルにおいて選択的な抗トロンボキサン(TX)剤は有効であった.既にヒトにおいても特異的TX合成阻害剤Ridogrelが潰瘍性大腸炎に対して有効である可能性を示した報告や,現在進行中の別のトライアルもある.これらの検討で良い結果が出ればIBDの治療に新しい可能性が拡がるであろう.
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