学会印象記
第45回日本消化器内視鏡学会総会
酒井 滋
1
1帝京大学附属溝口病院外科
pp.726-727
発行日 1993年6月25日
Published Date 1993/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403106201
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第45回日本消化器内視鏡学会総会は5月13日から15日までの3日間にわたり,新潟県立がんセンター新潟病院内科・小越和栄先生を会長として,新潟県民会館を中心に盛大に開催された,総会1日目,2日目は雨天となり,5月としては肌寒ささえ感じたが,いずれの会場にも多数の会員がつめかけ,熱気にあふれた討論が行われていた.今総会では一般演題に6分の発表時間と4分の討論時間が設けられ,いずれの演題に対しても余裕をもって,踏み込んだ議論が行われたように感じられた.
総会1日目のシンポジウム(1)「胃癌の発育・進展(あるいは自然史)からみた内視鏡的治療の問題点」(司会;八尾恒良,磨伊正義)は,最近注目されている内視鏡的粘膜切除術に対する理論的根拠を深るためにも,時宜を得た主題であった.発表の中では,それぞれの施設で,様々な理由で内視鏡的な経過観察がなされた興味深い胃癌症例が紹介された.これらの症例の分析から,どのような癌が発育・進展が早いか,遅いかが,ひとつの話題の中心であり,同時に内視鏡的粘膜切除の適応に関心が寄せられた.討論の中では,年齢,癌の組織型,内視鏡的形態あるいは超音波内視鏡による深達度診断,核DNAの分析などさまざまな角度からアプローチされた.個々の施設では癌の自然史を知り得た症例数に限界があったためか,今回の検討で完全な統一見解を出すまでには至らなかった印象があるが,今後も粘膜切除という先端的な治療法が発展するためには,ますます精密な内視鏡的観察と,多数の症例の蓄積と分析が必要であることが改めて認識された.
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