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第37回日本消化器病学会大会は11月9日(木)から3日間,名古屋国際会議場において行われた.新幹線"のぞみ"で8時には会場に到着したが,大会に先立ち開催された「Helicobacter Pylori(HP)感染の診断法確立に関する研究会」は早朝にもかかわらず満員で,この問題に関する関心の高さが伝わってきた.欧米ではureabreach testが非侵襲的な検査法として好んで用いられていると聞くが,分析に特殊な器械を必要とする難点があり,本邦での普及は今一つである.血清抗体価の測定はHP感染の診断には有用であるが,除菌判定上はむしろペプシノーゲン法のほうがリアルタイムに経過が追えるという.多岐にわたり密度の濃い発表が行われたが,Marshallが初めてHPの分離・培養に成功してから10年以上が経過しており,標準的な診断法の確立が切に望まれる.HPに関する発表は本会期中,必ずどこかで行われ,しかもどの会場も大盛況であったことを付け加えておく.
分子生物学の消化器癌への応用が一層深まった感を示したのが,同日午後に開かれたワークショップ「分子生物学と消化器癌-消化管」であった.今や分子生物学なくして癌を語れない状況になってきており,それは癌の発生・転移などの基礎的分野に限らず,一般臨床における診断・治療にまで及んでいる.問題はあまりに多くの情報が飛び交い,一体何を,どこまで検索すればよいのか混乱しているところにある.研究と臨床の垣根がほぼ取り去られようとしている現在,真に有益な情報を選んで提供することが「胃と腸」の役目であろう.話が横道にそれたが,講演では潰瘍性大腸炎の癌化における遺伝子検索の利用,各種遺伝子変化の予後因子としての有用性,多剤耐性遺伝子の検索を抗癌剤治療の指標とする試みなどを,臨床応用が近い話題として興味深く拝聴した.一方,臨床上なかなか成果の上がらない消化器癌の化学療法では,アポトーシス誘導やアンチセンスDNAの細胞導入など,遺伝子治療に繁がる夢のある話題が提供された.
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