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第30回日本消化器病学会大会は10月20日,21日,22日の3日間,鹿児島市において,鹿児島大学第2内科橋本修治会長のもとに開かれた.主会場である鹿児島市民文化ホールは素晴らしい設備と環境にあり,特に桜島の眺めは,疲れた目を休めるためには絶好のものであった.大会の演題数も厖大であり,4つのシンポジウム,パネル,3つのワークショップ,2つのラウンドテーブル以外にも728題の一般演題,152題のポスター展示があった.会場数もこのために10の口演会場,3つのポスター展示場が用意されていた.学会印象記を書くよう岡部教授に指示され,可能な限り聴いてみたが,1人では限界があるのは当然で,筆者が聴いたものならびに教室員にまとめてもらったものを包括して述べることでその責を果たしたい.
20日の午前中はシンポジウム“胃酸分泌・胃粘膜防御の調節”を聴いた.H2ブロッカー,プロトンポンプインヒビターの導入により消化性潰瘍の薬物療法が大きな変革期を迎えているのは周知であるが,これらの開発は酸分泌ならびにその調節機構の解明に少なからぬ影響を与えた.また粘膜防御機構の研究も近年飛躍的に進歩してきた.本シンポジウムを聴いて,群盲象を撫でるというありさまであった胃粘膜防御機構を構成する諸因子の研究ならびにその意義が,ようやく整理され,1つの体系として万人が認めうるものとなりつつあるという感想を持った.従来のSun & Shayのbalance theoryで説明するのは限界であると言われてきたが,酸分泌,胃粘膜防御機構がお互いに連携をもってコントロールされているなどの斬新な報告もあった.プロスタグランディンの真の意味など残された問題も多いことも実感させられるシンポであった.
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