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現在の胃癌の診断は,内視鏡下で生検した組織で癌と診断され,初めて胃癌と診断される.内視鏡での観察力,組織診断の正確さが,胃癌診断能に直結していると言える.スクリーニングX線検査で拾い上げても内視鏡でその部位を正確に観察し,生検が行われなければ異常なしとなる.殊に噴門部近傍の早期癌は内視鏡所見の,しい症例が多い.X線所見の描出された部位を正確に診断し,内視鏡観察時にその部位を方向を変えて観察し,正確に生検することが噴門部早期癌の診断能を向上させるために重要であると筆者らは述べてきた.筆者らの噴門部病変の診断体系ができた時期は1978年,最初の早期癌〔20mmのⅡa+Ⅱc(sm癌)〕の発見以降である.その後約1年間で6症例の早期癌が発見されたが,1例を除いてsm癌であった.この時期の生検診断で混乱があった.噴門部癌の大半が,分化度の高い分化型癌のために筆者らのグループでは高分化型腺癌と診断しても,他の病理ではGroup Ⅱの診断となり手術が延期になる症例が多かった.幸いにして西満正先生が第1外科の教授在任中で,御指導を受け手術症例が増えた.こうして得られた噴門部早期癌を臨床病理学的に再検討して噴門部癌の診断は現在の診断理論で十分なのかを考える時期に来ていると思う.
本誌で噴門部病変の特集号は「食道・噴門境界部の病変」(11巻6号)と,「食道・胃境界領域癌の問題点」(13巻11号),「噴門部陥凹型早期胃癌の診断」(24巻1号)である.丸山は24巻1号の序説で,噴門部の陥凹型早期癌はX線診断と内視鏡診断の優劣論争を現時点の感覚で捉えたとき,最後に残る話題であろうと述べ,パンエンドスコピーをもってすれば上部消化管の診断にX線検査は不要という世論に,各主題論文の筆者らに答えを出すように求めた.形態的表現の乏しい噴門部早期癌を内視鏡で拾い上げ,正確に生検するために高木は側視鏡が優れていると論じ,鈴木は小彎側の病変は前方視式で発見ないしは診断され,後壁の病変は側視式で診断されているという傾向であると論じている.
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