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編集後記
赤松 泰次
pp.1244
発行日 2002年8月25日
Published Date 2002/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104536
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1980年台初頭に始まったEMRの手技は,早期胃癌の内視鏡治療に用いられるようになってすでに20年の歳月が過ぎようとしている.それ以前にも,手術不能な早期胃癌症例に対して局注法やレーザー療法といった組織破壊法を用いた内視鏡治療が行われていたが,病理組織学的検討が可能なEMRの手技の開発によって早期胃癌に対する内視鏡治療が本格的に行われるようになった.当初はその適応について様々な議論が交わされ,リンパ節転移のない条件として“潰瘍形成のない高分化型の粘膜内癌で,大きさ20mm以下”という一定のコンセンサスが得られたが,近年その適応拡大が大きな話題となっている.
今回の特集では,標準的適応におけるEMRの成績,適応拡大として20mm以上の大きな病変に対する手技の工夫,内視鏡治療を念頭に置いた未分化型癌の臨床病理学的検討,遺残再発病変に対する治療法などが提示されているが,EMRの黎明期から関わってきた筆者にとってはまさに今昔の思いが否めない.後藤田氏,小山氏,石後岡氏の論文に示されている全周切開と粘膜下層の直接切離というEMRの新しい手技は,EMRの適応拡大にとって今後必須の手段となっていく可能性が高い.残念ながら現在のところ,従来の手技に比べて簡便性や安全性に問題があるが,その普及のためにはさらに様々な処置具の開発や手技の工夫が必要と思われる.
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