早期胃癌研究会
1996年3月の例会から
牛尾 恭輔
1
,
伊藤 誠
2
1国立がんセンター中央病院放射線診断部
2名古屋市立大学医学部第1内科
pp.782-784
発行日 1996年5月25日
Published Date 1996/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104156
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1996年3月の早期胃癌研究会は,3月27日,牛尾恭輔(国立がんセンター中央病院放射線診断部)と伊藤誠(名古屋市立大学第1内科)の司会で開催され,6例が供覧された.
〔第1例〕55歳,男性.虫垂口原発の杯細胞カルチノイド(症例提供;福岡大学筑紫病院消化器科 和田陽子).
X線と内視鏡(Fig. 1a, b)の読影は,ともに斉藤(旭川医大3内)が担当した.虫垂入口部の潰瘍および盲腸の浅い陥凹性病変を数個指摘した.病変が陥凹を主体とし,しかも多発していたことから,炎症性病変と診断したが,会場の出席者を含め,病名を挙げることはできなかった.生検で腫瘍性の異型細胞が認められ,福岡大での術前診断は上皮性の悪性腫瘍と発表され,会場がざわついた.病理の説明は山田(福岡大筑紫病院病理)が行った.虫垂口原発の杯細胞様の腫瘍細胞が充実性,蜂巣状に固有筋層から漿膜下層に浸潤していた.粘膜面よりもそれ以下に多量に浸潤しており,画像で指摘された盲腸の散在性の浅い陥凹性病変は,腫瘍が粘膜面に“顔を出した”所見であった.最後に杯細胞カルチノイドについて,わが国の36例のまとめが示された.本研究会では初めて提示された症例と考えられ,出席者に強い印象を与えた貴重な症例であった.
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