特集 図説 形態用語の使い方・使われ方
第Ⅱ部 検査手技・所見等の用語
c.病理・病変用語
腹膜偽粘液腫(pseudomyxoma peritonei)
岩下 明徳
1
1福岡大学筑紫病院病理
pp.428
発行日 1996年2月26日
Published Date 1996/2/26
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104100
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腹部臓器の病変,主として粘液産生性腫瘍に関連して,腹腔内の全体または一部に粘液塊が存在することを古典的には腹膜偽粘液腫と呼ぶ.この言葉はWerth(1884年)の命名で,診断名を表すものではなく,単に所見を表す臨床上の記述的名称である。したがって,過去には原因疾患として,虫垂・卵巣・膵臓の粘液産生性腫瘍,胃・大腸・胆囊の粘液癌,虫垂・Meckel憩室の粘液瘤,先天性囊状腸重複症などが報告されている.
しかし,現在では腹膜偽粘液腫は粘液産生の著しい分化型腺癌の腹膜播種によって,腹腔内に大量の膠様粘液が貯溜する腹膜癌腫症の特徴ある1型と理解されるようになっている.原発腫瘍は通常虫垂,卵巣,膵臓の粘液囊胞腺癌であると言われるが,最近のいくつかの研究では男性女性ともに大多数の腹膜偽粘液腫症例の原発腫瘍は虫垂の粘液囊胞腺癌であると記載されている.
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