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はじめに
「早期大腸癌の病理組織診断基準-その差はどこにあるのか」が1992年に,本誌「胃と腸」27巻6号で特集された.この成績から,消化管を専門とする日本の病理医の間でも,早期大腸癌の組織診断基準が3つ,ないし4つに分かれることがわかった1).その理由は,①癌診断の重要な基準が構造異型度に置かれているか,細胞異型度に置かれているか,②細胞異型を表現する項目のうち,どのような項目が癌診断の重要な項目として好んで用いられているか,③陥凹型と隆起型とで組織診断基準が異なっているかどうか(同じ組織異型度でも,隆起型病変に比べて,陥凹型病変では組織異型度を高く判定すること),であった.
6年が経過した今回,「早期大腸癌の組織診断基準-諸問題は解決されたか」を特集とした.この背景因子として,早期消化管癌の組織診断基準の差が,日本でみられる以上に,日本と欧米との間で大きいことが明らかになったことも1つである2)3).1992年に指摘された「組織診断基準に関する諸問題」は6年が経過した現在,解消ないし解決されたのであろうか.この点を明らかにするために取り上げられたのが,今回の特集である.
1992年の病理診断結果と今回,1998年のそれとが同等に比較できるように,各施設に1992年と同様の症例を提供していただいた(1435頁のTable 1,1436頁のTable 2).両年度の症例間で,病変そのものの大きさと肉眼型は極めて類似していた(0-Ⅱc+Ⅱa型の頻度のみが1998年度の対象例で有意に高かった).
以下,1998年度の病理診断結果を分析しながら,早期大腸癌の組織診断基準にみられた諸問題(癌診断率の差など)がどのように解消・解決されているのかを述べてみたい.
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