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編集後記
西俣 寛人
pp.242
発行日 1999年2月25日
Published Date 1999/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403102968
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通常の内視鏡検査時に,ヘルニアが存在し,逆流性食道炎が併存している場合は癌,Barrett上皮の存在を意識して観察しているが,それ以外はBarrett上皮の存在を意識して内視鏡検査を行っていなかった.しかし,今回呈示されたBarrett上皮内に存在した早期癌は癌の存在診断も,浸潤範囲の決定も困難な症例がみられた.序説で吉田が述べているように,Barrett上皮内に発生する癌がどのような形態を示し,発育していくのかまだ不明である.田嶋によると,Barrett腺癌は低異型度癌が高異型度癌と混在している症例が約半数を占め,その特徴は背景のBarrett上皮に類似した組織形態を呈し,境界は肉眼的,組織学的に極めて不明瞭である.またKi-67・p53蛋白染色は組織学的に異型のないSECでも高異型度癌の約半数に発現がみられたと述べている.吉村が述べているように,逆流性食道炎→Barrett上皮の発生→腸上皮化生の出現→p53などの遺伝子異常→高分化型腺癌という過程が発癌過程の1つと考えられ,逆流性食道炎を厳重に経過観察することがBarrett食道癌に対する適切なサーベイランスにつながると考える.更に星原が述べているように,SSBEにもBarrett腺癌が発生することを考えると,下部食道の観察は縦走血管を含めて,丁寧な観察が必要になる.
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