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JDDW(Japan Digestive Disease Week)2010は,10月13日(水)から16日(土)までの4日間,消化器疾患関連の6学会が合同で主催する会議として,日本を代表するコンベンションセンターの1つであるパシフィコ横浜の地で開催された.ご存じのようにパシフィコは,港横浜を象徴するランドマークとして国際的にもよく知られ,各会場を移動する度に眺望される海の景色は大変美しく,熱心な討議が続くセッションに,ややもするとぐったりと疲れ気味となる出席者の心を癒しリフレッシュさせてくれていた.横浜の街はいつ来てもどこか心地よい開放感を感じさせてくれるが,今回は11月に同地で開催されるAPEC JAPAN 2010に備え,全国から動員された防弾チョッキ着用の警察官が学会場の出入り口や周辺街角のあちこちに立って,テロ対策の警備活動を行っていたのが,いつもとは異なる緊張感を学会にもたらしていたように思われた.
まず,学会初日の13日は午前中に,自分自身が下部消化管内視鏡医として日頃から検診業務にも関与していることから,樋渡信夫会長が主催された日本消化器がん検診学会の宿題講演と会長講演を拝聴させていただいた.西田博先生の宿題講演「便潜血検査を用いた大腸がん検診の費用便益分析」は,本邦の経済状況も年々厳しさを増すなか,検診の精度と医療経済学的な効率の両立という難問に真正面から取り組まれた充実の講演であった.樋渡会長の会長講演「大腸がん検診─歩んできた道,そしてこれから」は,ご自身のルーツの1つでもあり,日本のがん検診の草分けとなった宮城県対がん協会(初代会長黒川利雄先生)のお話に始まり,会長が深くかかわってこられた大腸癌検診の歴史とこれからについて講演された.2007年に「がん対策推進基本計画」が策定されたのも,これまでがん検診学に尽力された諸先生のご努力の賜物と痛感させられた.昨今,メタボリックシンドロームを中心とする特定機能検診の開始に伴って,大腸がん検診の受診率が低下している自治体も多いと聞いており,大腸内視鏡に伴う患者の負担感の緩和や広報活動などを通じた受診率の改善が急務と思われる.
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