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従来,小腸疾患の診断はX線造影検査が中心であり,内視鏡検査の開発・普及は立ち遅れてきた.しかし,2000年にGiven Imaging社が開発したワイヤレスカプセル内視鏡の登場に続き,2001年には山本らによりダブルバルーン法が考案され,小腸内視鏡検査は大きな進歩を遂げた.これらの新しい内視鏡検査法の確立・普及とともに,臨床現場では小腸疾患の診療面で新たな展開を迎えている.すなわち,これまでのX線造影検査中心の診断体系から内視鏡検査を加えた新たな診断体系の確立を迫られるとともに,ダブルバルーン内視鏡を用いた新たな治療体系の構築も必要となってきた.本誌では,40巻11号で「小腸内視鏡検査法の進歩」という特集が組まれ,カプセル内視鏡とダブルバルーン内視鏡の手技と適応が紹介されている.その後1年を経て企画された本特集では,各種小腸疾患診療における新しい局面について,主として内視鏡検査の役割という観点から論じていただく予定である.
出血は小腸疾患の最も重要な症候である.Fig. 1に筆者らの施設における現時点での小腸出血の診断手順を示す.大量出血を来した患者の診察にあたっては,バイタルサインや意識レベルの把握から出血性ショックの有無を確認後,輸液・輸血ルートの確保を行ったうえで,血管造影またはダブルバルーン内視鏡が施行される.一方,少量・中等量出血の場合,上部消化管内視鏡検査および大腸内視鏡検査をまず行い,小腸以外の消化管からの出血を完全に否定したうえでダブルバルーン内視鏡,カプセル内視鏡,小腸造影または腹部超音波検査のいずれかを施行する.すなわち,症状・一般検査から急性炎症性疾患が疑われれば腹部超音波検査または小腸造影が,慢性炎症性疾患または腫瘍性疾患が疑われれば小腸造影またはダブルバルーン内視鏡がそれぞれ第一選択となる.少量・中等量の出血があっても症状・一般検査所見に乏しい症例ではカプセル内視鏡が他検査に優先される.なお,明らかな顕出血は認めなくても,腹痛・下痢などの症状や潜出血がある場合は小腸造影またはダブルバルーン内視鏡が行われる.このように,ダブルバルーン内視鏡とカプセル内視鏡の登場によって小腸出血性疾患に対するアプローチの方法も従来とは大きく異なってきた感がある.本号で両内視鏡検査法の役割が明確になることを期待したい.
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