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はじめに
表面型大腸腫瘍の発見頻度やsm癌に対する内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection;EMR)件数の増加に伴い1)~3),大腸sm癌の根治基準が変更されることとなった.すなわち従来の大腸癌取扱い規約における“smにわずかに浸潤した癌(200~300μm程度に相当)”4)から,sm癌取り扱いプロジェクト研究委員会から提唱された“sm垂直浸潤距離1,000μm未満で脈管侵襲を認めない病変”5)とされ,新しい大腸癌取扱い規約にも記載される予定である.われわれ臨床医にとって今後はこのsm垂直浸潤距離1,000μmの術前診断精度の向上が重要となる.大腸sm癌の深達度診断に拡大内視鏡6)7)や,超音波内視鏡(endoscopic ultrasonography;EUS)検査8)が有用であることは疑いの余地はないが,一般臨床家においては時間的な制約や技術的な問題もあるため,実際にはこれらの検査を行っている施設は全体からみると少ないのが現状である9)10).
これを受けて2004年7月に大腸癌研究会「内視鏡摘除の適応」プロジェクト研究班が多田正大委員長のもと組織された.この研究班の目標は,“内視鏡治療可能な大腸sm癌の通常内視鏡所見(色素撒布を含む)を明らかにし,治療指針を作成する.これらの診断に拡大内視鏡やEUSは用いない”,である.
本特集では,この研究班の7名の委員(以下,ベテラン)の施設から集められた病理組織学的sm浸潤距離の明らかなsm癌,180症例の中から,隆起型15例,表面型15例の30例(症例提示は1257頁から)を選択し,若手の先生方に前向きに読影いただき,正診率(1,000μm未満か,以上か),浸潤所見の拾い上げの有無についてベテランの読影結果と比較した.なお,ベテランの読影結果の詳細については「胃と腸」誌40巻13号をご参照いただきたい11).今回の対象症例30例の内訳をFig.1に示す.病変の大きさでは10mm未満;4病変,10~19mm;24病変,20mm以上;2病変であり,sm浸潤距離では1,000μm未満が13病変,1,000μm以上が17病変である.読影いただいた所見の内容についてTable 1に示すが,プロジェクト研究班で読影したのと同様の項目である.また,読影いただいた若手医師名と所属施設をTable 2に示す.「胃と腸」誌の編集委員から推薦いただいた卒後7~13年の医師の8名である.なお,Table 2の読影医の順と結果グラフ中の正診率の順は一致していない.
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