増刊号 図解 診療基本手技 第2集
病歴のとり方
病歴のとり方の具体例(1)—胸部
福井 次矢
1
1佐賀医科大学・総合診療部
pp.13-15
発行日 1992年10月30日
Published Date 1992/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402909638
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胸部症状のおもなものには胸痛,呼吸困難,動悸,咳,痰,喀血,乳房のしこりなどがある.そのような症状の鑑別診断には胸部以外の臓器の疾患も考慮しなくてはならないことが少なくない.反対に,胸部臓器の疾患を鑑別診断上考えなくてはならないという意味で,失神ないしその前兆症状(presyncope)も“胸部症状”に含まれよう.
病歴聴取には医師-患者関係の確立や治療の一環としての意義も含まれ,胸痛や呼吸困難を訴える患者のうち,かなりの者で心理社会的側面についての配慮が治療上必要になるが,病歴聴取の最大の役割は何といっても疾病の有無とその種類の目星をつけることにある.つまり,患者が述べる“身体についての主観的な異常感覚とその解釈”を介して,医師が医学知識を駆使し,患者の体内で実際に起こっている病態生理を推理するという知的営みである.
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