今月の主題 白血病—最新の知見と治療
(editorlal)白血病—最新の知見と治療
大野 竜三
1
1名古屋大学医学部分院・内科
pp.556
発行日 1990年4月10日
Published Date 1990/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402909508
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白血病は骨髄中において,造血細胞が腫瘍化すなわち白血病化する疾患である.典型的なものは,成熟能力を失った幼若芽球が自律性に無制限に増殖するので,腫瘍として容易に理解し得る.しかし,成熟能をもちながらも正常機能を発揮するほどには成熟しきらず,かつ,形態学的にも異常を示す異型変性(dysplasia)も,腫瘍性変化という意味で広義の白血病の範疇に入り,近年,myelodysplastic syndromesとして包括されているが,その白血病化の過程の違いは十分解明されていない.
また,慢性骨髄性白血病(CML)では骨髄球,後骨髄球といった未熟白血球が末梢血中にみられるのに,慢性好中球性白血病では成熟好中球が増加するのみであり,そのあたりのメカニズムもまだまだ不明である.紛らわしい用語に白血性・白血化(leukemic)がある.悪性リンパ腫の白血化したものと,急性リンパ性白血病の明確な定義もない.近年明らかにされた単クローン抗体および遺伝子によるリンパ球の成熟過程の細胞形質の解析結果に基づき,白血病が骨髄中での腫瘍性変化と限定して,リンパ球の正常成熟過程で骨髄中にとどまる段階までの細胞の腫瘍化を白血病と定義し,T細胞・B細胞へ分化した後の腫瘍化をすべて白血性悪性リンパ腫とすれば,かなり明確になると思われる.
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