今月の主題 狭心症—日常臨床へのExpertise
Introduction
狭心症の病態生理と分類
斎藤 穎
pp.594-596
発行日 1998年4月10日
Published Date 1998/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402909293
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狭心症の病態生理
狭心症は心筋の酸素の需要に対して供給が不足する場合に生じ,その原因となる最も重要な因子は,冠動脈病変の狭窄による冠血流量である(図1).安静時の冠血流は狭窄が90%にならないと低下しないが,運動時の冠血流は狭窄度が50%でも減少する(図2).冠攣縮から起こる安静狭心症は,狭窄度が95%以上で,少なくとも正常時に比べ血流の遅延がなければ起こらない.
このような器質的,機能的な狭窄のほかに,冠血流に影響する生理的,神経体液的因子が注目されるようになった(表1).冠循環には自己調節機構があり,血管の平滑筋の筋性因子や組織圧などの生理的因子,またアデノシンや一酸化窒素(nitric oxide:NO)などの代謝,体液性因子の関与が注目されている.一方,病理学的な検討から,虚血性心疾患の病態の基盤にある冠動脈の粥腫が進行に伴い脆弱化し,そして破綻が起こり,血栓が形成される一連の過程が明らかにされた.それに臨床像と併せて,急性冠症候群(acute coronarysyndrome)と呼ぶようになった.その粥腫の脆弱化の機序は,マクロファージや肥満細胞から産生されるプロテアーゼが細胞外マトリックスを分解することによると考えられている.その結果,粥腫の被膜が菲薄化し,ついには破綻するのである.
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