WIDE SCOPE
アーチファクトと正常変異—画像診断のスタートライン
工藤 祥
1
1佐賀医科大学放射線科
pp.289
発行日 2001年10月30日
Published Date 2001/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402908403
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画像診断でいつも悩まされるものにアーチファクトと正常変異がある.
アーチファクト(artifact)を英和辞典で引くと,人工産物とある.目的外のものが画面に現れたときに使われる言葉であり,障害陰影と呼ぶほうがより適切であろう.X線写真ではヘアピン,ネックレスなどは一目瞭然であるが,束ねた髪が肺腫瘤に見えたり,Tシャツの印刷模様がX線不透過性であったりして難しいこともある.術後の腹部撮影に写っていた鉗子が,実は体内に存在していたという例はアーチファクトの逆事例といえよう.CTでは,partial volume effect,beamhardening artifactなどが有名である.また,頭部CTで画像の中心部に小さな高吸収像を認めた場合は,直ちに出血と結論づけず,画像再構成のミスによるアーチファクトである可能性も考え,他のスライスをチェックする必要がある.MRIはいっそう複雑で,機器・撮像法の設定,患者体内の金属,血流,脂肪,気体など,アーチファクトの要素は非常に多い.また元来,アーチファクトと目されていた現象を逆に利用した撮像法や読影法さえある.
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