WIDE SCOPE
たらればの話
淀野 啓
1
1弘前大学医学部保健学科
pp.280
発行日 2001年10月30日
Published Date 2001/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402908401
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インターベンショナル・ラジオロジー(IVR)において,「たられば」は禁句である.術者の指先のさらに遠くで操作するIVRの手技に2回目はない.放たれた乾坤一擲の必殺技に繰り返しは許されない.
歴史においても,「たられば」を言っても何ほどの意味もなさない.しかし,たらればを夢想するのは人情である.なんとなく遅れた感のする東北に生まれ,育ち,生活するわが輩は,ときどき,あの日あの時東北の勇者たちがこうしていてくれたら,豊かなみちのくがあったのにと思う.東北が日本史の檜舞台に上るチャンスが過去3度あったように思うが,事実はそのようには進まなかった.1回目は,1189年,鎌倉幕府に攻められ滅び去った奥州平泉の藤原一族の滅亡するときである.政治的には恐ろしく無感覚であったが,常識外の奇襲戦法に長け,おそらく日本で最初に騎馬隊を作り上げた偉大な戦争戦術家,天才義経を擁し,当時10万騎といわれた奥州武者をまとめ,頼朝の恫喝に屈せず戦った藤原泰衡であったなら…….しかし,武家の台頭に恐れをなすひ弱な貴族である藤原一族に勇気はなかった.
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