今求められる説明義務・6
新規治療法と「医療水準」
古川 俊治
1,2
1慶應義塾大学医学部外科
2TMI総合法律事務所
pp.1595-1599
発行日 2001年9月10日
Published Date 2001/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402908309
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転医勧告義務・転医提示義務の生じる範囲と「医療水準」
患者の疾患・病態が,他の医療機関へ転医させたうえでの治療を要する場合,医師には転医を勧告すべく患者に説明する義務が生じる(転医勧告義務).また医師は,治療実施に先立ち,患者に適応可能な数種の治療法の利害得失を説明し,行うべき方法を患者に選択させる義務があり,場合によっては他院に転医して行う治療法についても説明する義務が生じる(転医提示義務)1).それでは,転医を勧告し,または転医を提示しなければならない範囲はどこまでか.例えば,学会で客観性に乏しい成績が報告されただけの方法や,マスコミで紹介されただけの治療法のすべてについて,これらの義務が生じるとすれば,明らかに不合理である.
この点について,最高裁は,その診療当時の臨床医学の実践における医療水準としては,有効な方法として確立していなかった治療方法に関し,患者から要求を受けた場合であっても,その前提となる検査結果についての医師の説明義務を否定し2),新規治療法を受けさせるための転医勧告義務・転医提示義務が生じるか否かは,その方法が,「医療水準」として確立しているか否かを基準として判断されることを示してきた.
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