“One More Step”
胸痛と呼吸困難は急性心筋梗塞?
玉野 宏一
1
1獨協医科大学循環器内科
pp.121
発行日 2000年10月30日
Published Date 2000/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402907710
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私が以前,某病院に派遣されていたときのことです.ある日,同僚の医師から心エコー図検査の依頼がありました.「入院中の70歳代の女性に胸痛と呼吸困難が出現し,急性心筋梗塞を疑っている.しかし,心電図で明らかなST変化を認めないので,ぜひ心エコー図で確認してほしい」という趣旨の依頼でした.いわゆる急変で,患者さんの状態があまり良くないことを理由に,主治医は病棟への出張エコー検査を要望してきました.その病院で使用していたポータブルのエコー装置は旧式のもので,心臓と腹部の兼用機器でした.当然ドプラ法の施行できない機種で,性能も良くありません.“労多くして功少なし”ということがしばしばで,この種の依頼を受けるのはいつも気が重いものでした.しかも出張先が最も移動距離のある老人病棟ということで,正直なところ軽い足取りというわけにはいきませんでした.
病室に到着して患者さんを探し,エコー装置に電源を入れ,探触子を握ります.患者さんの体型は肥満に属するもので,「詳細な左室壁運動の評価は困難だろうなあ」などと思いつつ心エコー検査に取りかかりました.
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