図解・病態のメカニズム 胃疾患・12
胃発癌のメカニズム
森田 賀津雄
1
,
日下 利広
1
,
藤盛 孝博
1
,
寺野 彰
2
1獨協医科大学病理学(人体分子)
2獨協医科大学消化器内科
pp.1699-1702
発行日 2000年10月10日
Published Date 2000/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402907671
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消化器癌は,時代的に減りつつある癌と増えつつある癌に二分される.かつて胃癌は,日本では男女ともに高頻度であったが,1960年から1970年にかけて徐々に漸減し始め,最近では食道,大腸などの癌が増加し,先進国型に移行していると言われている.胃癌の発生母地として胃潰瘍やポリープが注目された時代もあったが,現在では胃炎が大きくクローズアップされている.1983年に同定されたHelicobacter pylori(H.pylori)の存在は1),胃炎,胃癌の相関を根本的に変えたといっても過言ではない.スナネズミを用いた動物実験2〜4)以外では,疫学的evidenceのみが現状で明らかにされた事象であるが5〜8),炎症性発癌の機序として,胃癌の原因をH.pyloriによって惹起される慢性胃炎,あるいは萎縮性胃炎に求めるのは常識的といえる.
胃癌は,発癌誘起物質と発癌促進物質が関与するとされており,古くは魚や肉の焼け焦げに含まれるトリプトファン,紫外線,放射線なども正常細胞の遺伝子を傷つける物質が発癌誘起物質であり,アルコールやたばこ,アフラトキシン,ニトロソアミンなどが発癌促進物質と考えられており,たばこなどは両方の要素をもつとされている.
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