医道そぞろ歩き—医学史の視点から・42
臓器から組織へと病気を追ったビシャ
二宮 陸雄
1
1二宮内科
pp.1866-1867
発行日 1998年10月10日
Published Date 1998/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402907039
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『膜の研究』という本がある.180O年に,パリのオテル.ディユ病院の外科医で29歳のビシャが書いた.ロベスピエールが断首されて,恐怖政治の幕が閉じて6年目のことである.当時フランスの町の主な病院はみなオテル・ディユと呼ばれていたが,患者は雑居して不潔で,妊婦の間に梅毒や痘瘡の患者もいるという状況であった.
この本でビシャが「膜」と書いたのは,今でいう組織のことである.顕微鏡はすでに発明されていたが,まだベルリン大学のシュワンが動物の細胞を発見する前であった.それに,ビシャは顕微鏡下に見える像が真実のものかどうかを疑い,顕微鏡を使わないで研究した.組織を粗大な特徴によって21に分類し,腐敗,乾燥,水浸,煮沸,酸やアルカリとの反応などの操作で分析した.そして,動物実験や外科的観察を加えて,もし異なる臓器の中で同類の組織が同じように病気になれば,同一の症候を示すはずだと考えた.
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