電子内視鏡による大腸疾患の診断・17
大腸の粘膜下腫瘍
多田 正大
1
,
清水 誠治
1
,
柴峠 光成
1
,
大塚 弘友
1
1京都第一赤十字病院第2内科
pp.1332-1337
発行日 1993年7月10日
Published Date 1993/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402902197
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大腸腫瘍を大別すると,病理学的には上皮性腫瘍(癌腫,腺腫,化生性ポリープや過形成性ポリープ,カルチノイドなど)と非上皮性腫瘍(平滑筋腫,脂肪腫,線維種,神経線維種,リンパ管腫,悪性リンパ腫,平滑筋肉腫など)に分けられる.上皮性腫瘍は粘膜面に発生し,腸管腔へ向かって発育するのに対して,非上皮性腫瘍の多くは粘膜下層より深層に,すなわち粘膜下腫瘍として増殖することが多い.粘膜下腫瘍とは文字通り粘膜の下に存在する病変であり,その多くは非上皮性腫瘍であるが,種類は複雑多岐にわたる.上皮性腫瘍であるカルチノイドも代表的な粘膜下腫瘍であるし,癌も稀には粘膜下腫瘍としての増殖をみせることもあり,その鑑別診断は難しい.
粘膜下腫瘍か否かの内視鏡診断は難しくない.なぜなら,上皮性腫瘍の内視鏡像をよく記憶しておくことによって,これらに該当しないような所見が得られたら非上皮性腫瘍が疑われ,粘膜下腫瘍として診断することができるからである.腫瘍の表面を正常上皮が被蓋していること,一部潰瘍を形成していても,その周辺の被蓋上皮は正常粘膜であること,病変の大きさの割には表面が平滑であり,癌や腺腫のように分葉や結節をつくらないこと,時には胃の粘膜下腫瘍と同様に,いわゆるbridging foldを形成すること,などが本症として積極的に診断する所見である.
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