今月の主題 ウイルス肝炎ABC
EDITORIAL
ウイルス肝炎の現状と問題点
矢野 右人
1
1国立長崎中央病院臨床研究部
pp.400-401
発行日 1993年3月10日
Published Date 1993/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402902001
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ウイルス肝炎は,1970年代初期,オーストラリア抗原,いわゆるHBs抗原が臨床的に利用されるようになり,脚光を浴びるようになった.特にB型肝炎ウイルス感染経路が,母子感染という,生下時運命づけされるような形態をとり,生涯感染が持続し,高率に肝癌との関連があることが判明し,肝炎ウイルスの感染,発症,慢性肝障害,肝癌とすべての段階で研究が進められてきた.
その後,B型肝炎ワクチンの登場,予防法の確立,A型肝炎の診断と疫学の解明,インターフェロンの登場によるB型肝炎の治療,そしてHCV抗体を用いたC型肝炎の診断と,この20年間いくつかの大きなエピソードにより,一段と関心が高められてきた.しかし,ウイルスの持続性感染で,癌にまで関連する本疾患の根本的治療法には結び付いていかなかった.C型肝炎に対するインターフェロン治療で多くの治癒症例が集積され,この治療法が保険適用となって以来,近代ウイルス肝炎研究の歴史の中で,最も大きな山場に差し掛かっていると考えてよい.肝臓研究者のみならず,一般医家の関心も高く,世をあげて注目されるに至った.
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