検査
検査データをどう読むか
伊藤 喜久
1
1自治医科大学・臨床病理学
pp.1254-1257
発行日 1990年7月10日
Published Date 1990/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402900312
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◇症例の経過
臨床像,および臨床検査所見(末梢血液中のリンパ球の増加,蛋白分画所見,IgM濃度の著増,尿中Bence Jones(BJP)定性試験陽性など)から原発性マクログロブリン血症,リンパ腫,CLLなどのBリンパ増殖性疾患を疑いさらに検索を進めた.本症の診断に重要な鍵を握ると考えられる免疫電気泳動法(IEP)をまず施行した(図1).抗ヒト全血清(AWHS)に反応してfastγ〜midγ位に,IgGに重なって一見IgAとも思われる沈降線が観察された.ところが,抗α鎖抗体に反応する沈降線はほとんどなく,α1〜midγ位の幅広い範囲で抗μ鎖抗体と反応する沈降線が見出された.さらに,2ME未処理の条件ではα1〜α2位で抗L鎖抗体のいずれにも反応しないピークが認められ,μ鎖の存在が疑われた.検査上注目すべき点は,2ME非還元処理の条件で,あたかも還元処理したかのような曲率半径の広い沈降線が観察されている点で,分子量の小さいIgMフラグメントの存在の可能性を考慮するヒントとなる.一方,抗L鎖抗体に対する反応性では,midγ位に,抗κ抗体に対してのみ反応するモノクローナルなピークがあり,BJP-κと同定された.また,尿IEPでもBJP-xが同定されている.
血中μ鎖の最終的な同定は免疫選択法(Im-munoselection)による.
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