書評
—岩田 健太郎 著・監訳—シュロスバーグの臨床感染症学 第2版—Schlossberg's Clinical Infectious Disease, Third edition
倉原 優
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1国立病院機構近畿中央胸部疾患センター/臨床研究センター感染予防研究室
pp.2111
発行日 2024年11月10日
Published Date 2024/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402229867
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総重量2.7 kg.このシュロスバーグの本の重さである.40代になり筋力も衰えた今,これを片手で持つのは至難の業だ.両手でやさしく扱う.何より,好きな本だから落としたくない.最近は,医学書の多くがオンラインコンテンツ化されてしまった.たとえそうでなくとも,医学書を裁断してPDF化している医師は多いかもしれない.しかし,私のような中堅医師にはデジタル教科書をうまく使いこなせない頭の硬さがある.文字は画面を拡大すれば見えるが,それだとページの全体像が分からないなどのデメリットがある.そのため,医局の本棚に置いておき,パッと取り出せるスタイルを私は好む.シュロスバーグは持ち歩く書籍ではないので,どうしてもそういう本になる.
この本は,疾患としての切り口,病原体としての切り口で縦横にスパスパと感染症が細断されていて,たとえるならサイコロステーキのような食べやすい仕上がりになっている.個々の著者独自の視点もあって,スパイシーであったり素材の味を活かしたり,味変が楽しめる秀逸なパーティ料理といえる.また,図表は重要なポイントにしぼって冗長にならず,写真・図は基本的にフルカラーである.盛り付けもよいというわけだ.日本語の全訳にある程度時間を要しているため,決して最新のエビデンスが網羅されているわけではないが,含まれている情報量は驚愕に値する.感染症学の「辞書」といっても過言ではない.
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