連載 ERの片隅で・11
突然発症宣言
関根 一朗
1
1湘南鎌倉総合病院【湘南ER】
pp.382-383
発行日 2024年2月10日
Published Date 2024/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402229438
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日曜日の朝、救急外来の出入口から外を眺めると風に舞う粉雪が見える。振り返って救急外来の待合を眺めると、診察を待つたくさんの人が見える。救急外来の混雑を考慮して、救急医関根は診察待ち時間の目安を書いた貼り紙を待合に掲示している。
研修医が関根を探して待合にやってきて、Walk-in受診した患者の方針についてプレゼンを始める。「54歳女性、急性上気道炎の患者です。昨日からの咽頭痛と倦怠感で受診されました。発熱はないんですが、糖尿病の既往があるのでコロナの迅速検査を施行しようと思います。」掲示した貼り紙を眺めながら関根が尋ねる。「身体診察で異常所見はあったかい?」研修医は答える。「本人はかなり辛そうなんですが、咽頭発赤やリンパ節腫脹など異常所見はありませんでした。流涎や嗄声もなく、急性喉頭蓋炎や深頸部膿瘍も疑わしくないです。」関根は首を傾げながら研修医の目を見る。「おや、“Pain out of proportion”か。」研修医はキョトンとして聞き返す。「ペイン、アウトオブ…なんですか?」関根は診察室のほうに歩き出しながら答える。「“Pain out of proportion”は、診察所見の見た目に比して、痛みの訴えが強いことを言うんだ。異常所見がなくて安心するのではなく、むしろ緊急疾患を疑えってことだね。一緒に診察してみようか。」
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