連載 医学古書を紐解く・7
Cope's Phrenic shoulder painとJoseph Capps—Cope Z. 『Early diagnosis of the acute abdomen』, Capps JA.『An Experimental and Clinical Study of Pain in The Pleura, Pericardium and Peritoneum』
清田 雅智
1
1飯塚病院 総合診療科
pp.1340-1341
発行日 2023年7月10日
Published Date 2023/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402229059
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今回は,私が恩師から勧められた“恩書”と言える本を紹介したい.1冊目は英国の医師Zachary Cope(1881〜1974年)の『Early diagnosis of the acute abdomen』で,彼は1921年にこの本の初版を40歳という若さで執筆したが,その後も同書を改訂し続け,最後に第14版を編集した際には91歳であった.私が一年次の研修医の頃に指導医の濱田裕久先生から1990年発行の第18版(William Silen編集)を勧められ,同期と輪読会をしてこの本からは実にいろいろと学ぶことがあった.
この本の「急性腹症における診断の原則」という章では,横隔膜に刺激病変が生じると痛みが肩へ放散するphrenic shoulder painについて書かれている.初版ではこの臨床的重要性を示した一人がHiltonであることや,動物実験で横隔神経が上行性線維だけでなく下行性線維も有するとFergusonが証明したことが記述されている1).しかし,このことは私が研修医の頃に買った第18版では消えており,本連載の第5回(5月号)で紹介した“欄外の注釈”のように,初版本の価値を再認識させてくれるものであった.
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