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サルコペニア(sarcopenia)はRosenbergによってギリシャ語のsarx(筋肉)とpenia(減少)からの造語を用いて1989年に提唱された.筋量の減少により身体機能低下,入院リスク,死亡リスクが高まること,またこれに伴う握力や歩行速度の低下が臨床上重要であることが明らかとなり,2010年にはEWGSOP(European Working Group on Sarcopenia in Older People)がサルコペニアを「進行性かつ全身性の筋量および筋力の低下であり,身体機能障害,QOL低下,死のリスクを伴うもの」と定義づけるコンセンサスを発表した1).サルコペニアの最も重要な要因としては加齢が挙げられ,危険因子としては,活動量不足,疾患(代謝疾患,消耗性疾患など),栄養不良が挙げられる.
一方,フレイル(frailty)は,「加齢に伴って身体機能,精神認知機能,社会性が低下し,全般的な活動性が減少した状態」を指す.フレイルは,加齢に伴う「衰え」を多面的(身体的,精神認知的,社会的)に捉えた概念であり,健康(robust)と要介護状態(disability)の中間として位置づけることができる(図1)2).つまり,フレイルは要介護状態の前段階(pre-disabled state)と考えられる.身体機能低下,精神認知機能低下,社会機能低下はいずれも密接に関連しており,1つの機能低下がほかの機能低下を次々に引き起こす〔フレイルの悪循環(vicious cycle of frailty)〕.すなわち,筋力が低下すると歩行機能が低下して外出の機会が減り,社会的に閉じこもり状態となり,ついには認知機能まで低下する.
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