書評
—丹羽 潔,武藤 芳照 著—頭痛外来ガイド—エキスパート解説&専門医も驚くトリビア 便利なセルフチェック付
西山 和利
1
1北里大学医学部脳神経内科学
pp.453
発行日 2022年3月10日
Published Date 2022/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402228095
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新興医学出版社から上梓されたばかりの『頭痛外来ガイド』をお届けいただいた.著者の一人である丹羽潔先生は都内に頭痛専門クリニックを開業し,多くのテレビ番組で頭痛の解説をしておられる頭痛の大家である.年齢的には評者と同世代ではあるが,頭痛診療においては評者が師として尊敬する人物である.そのように著者を詳らかに知る者として『頭痛外来ガイド』を読ませていただいた.
大学病院に勤める評者は外来で最も多い主訴の1つが頭痛であると学生に教えている.しかし本邦では頭痛を専門にしている大学医局や大学教授は決して多くはなく,頭痛だけで会社や学校を休むことは容易ではないのが日本社会の現状である.日本の頭痛が「たかが頭痛」と言われるゆえんである.しかし実際には頭痛の診断は難しく,時として治療も難しい.脳神経内科専門医である評者ですらそのように感じるのである.一次性頭痛の診断には,この検査で陽性ならこの診断といった簡単な診断のレールは敷かれていないのが一因である.が,よくわからないからと頭痛薬を盲目的に多用していると薬剤乱用性頭痛という泥沼にはまっていく.また頭痛を主訴として来院した患者が,その後の検査で生命にかかわる怖い頭痛,すなわち二次性頭痛,であったと判明して肝を冷やした脳神経内科医や脳神経外科医は少なくないはずである.しかも本邦には頭痛に苦しむ患者さんは実に4,000万人もおられ,頭痛のために社会が負う損失は日本だけでも毎年3,000億円以上である.つまり「たかが頭痛」と軽んじられてはいるが,実は「されど頭痛」なのである.
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