特集 皮疹はこう見る,こう表現する
扉
常深 祐一郎
1
1埼玉医科大学皮膚科
pp.1809
発行日 2020年10月10日
Published Date 2020/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402227204
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皮膚病変は難しい,皮疹をどう見たらよいかわからない,という声をよく耳にする.もちろん簡単ではないことは皮膚科医である筆者も認めるところであるが,少しでもわかりやすくする方法はないか,というのが本特集の目的である.
皮疹を難しいと感じる原因の1つは,皮疹を皮膚病変全体として見てしまっているからではないだろうか.皮膚病変は各発疹の集合体である.皮膚病変を個々の発疹という構成要素に分解して考えれば,もう少し見えやすくなるのではないだろうか.例えば,誰でも知っている湿疹という病名がある.しかし,アトラスでたくさん湿疹の写真を見たとしても,実際の皮膚病変が湿疹かどうか判断するのは難しいと思われる.湿疹とは,表皮を反応の場とした炎症反応で,組織学的には海綿状態を特徴としており,真皮や表皮内へリンパ球が浸潤するものである.それを反映して,肉眼的には紅斑や,丘疹,小水疱,鱗屑,痂皮といった要素が混在して多様性があり,時間的にも変化する.これを知っていると,アトラスを見る際にも,「確かに湿疹では紅斑があって,丘疹や小水疱が混在しているな」とか「蕁麻疹は,紅斑はあるけど丘疹も小水疱もなく,湿疹とは違うな」というように見る力を付けることができる.このように成り立ちを知り,分解して見ることにより,皮膚病変を見る目は変わるはずである.
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