書評
—倉原 優 著—その呼吸器診療 本当に必要ですか?—あるのかないのかエビデンス
長野 宏昭
1
1沖縄県立中部病院呼吸器内科
pp.1081
発行日 2019年6月10日
Published Date 2019/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402226354
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本書は,著者の倉原優氏が10年以上地道に取り組んできた呼吸器分野の診療において,それらが過去の研究や論文の結果(エビデンス)に基づくものかどうかを項目ごとに論じた最新書である.「呼吸器一般」,「感染症」,「閉塞性肺疾患」,「間質性肺疾患」,「肺がん」の5章に分かれており,それぞれの章ごとに重要な小テーマが取り上げられ,さまざまな角度から解説がなされている.解説は過去の大きなスタディの結果を紹介しながら,その分野にどのようなエビデンスがあるのか,もしくはないのかを丁寧に説明している.時折,著者自身の臨床現場でのプラクティスも紹介されており,そのコメントも示唆に富んでいる.
私たち臨床医は臨床現場で患者を診療するときに,多くの困難な問題,ジレンマに直面する.臨床医は後輩医師や学生,患者の家族に治療方針について説明する際に,判断の根拠となるものが過去の研究や論文の結果に基づくものなのか(EBM),あるいはエビデンスを踏まえつつも臨床医個人の経験や見解に基づくものなのか,をよく熟知しておく必要がある.本書はそれらについて非常に明快に解説してくれている.
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