書評
—宮本雄策 編著,大橋博樹 企画・編集協力—小児科医宮本先生、ちょっと教えてください!—教科書には載っていない、小児外来のコツ・保護者への伝え方
生坂 政臣
1
1千葉大学医学部附属病院総合診療科
pp.1919
発行日 2018年11月10日
Published Date 2018/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402225885
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奇をてらったようなタイトルだが,“ちょっと尋ねてみたい”小児診療での疑問がユーモアに富んだ対話のなかで瞬く間に氷解する,表題通りのプライマリ・ケア医向け読本である.まず登場人物の構成が素晴らしい.大病院の小児科専門医に加えて,診療所の指導医クラスと若手の家庭医療専門医という,プライマリ・ケア医向けのスモールカンファレンスとして理想的な布陣となっている.ちなみにそれぞれ実在するモデルがおり,また執筆には若手からベテランの家庭医の先生も協力しているらしい.これらの登場人物が互いの特性を活かしつつ織りなすハーモニーが大変心地よく,そのせいなのか各章を読み終えた直後から,関連する問題で困っている子供を診たくなるのが不思議である.サブスペシャリスト監修にありがちな,プライマリ・ケア医がここまで知る必要あるの?などのマイナス感情が一切湧き上がらず,海馬に新しい知見がすーっとしみ込んでいくのだ.筆者のプライマリ・ケアに対する考え方が最終章に特別編として記してあり,なるほどと合点がいった.彼はプライマリ・ケア診療の特性を深く理解しており,それ故にテーマ毎のエッセンシャルミニマム伝授に成功しているのである.
百聞は一見にしかず.とりあえず書店で手に取って,目次から気になる章を開いて欲しい.最初のページに目を通して,続きが読みたくなったら“買い”である.寝転んで読める学習書を目指したとあとがきに書いてあるが,筆者の文才の為せる技なのか,私は第1章から(不覚にも)通読してしまった.日常診療で誰もが遭遇するリアルな問題の現実的な解決策を,楽しみながら修得できる見事な一冊に仕上がっている.
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