書評
—柴田 実,加藤直也 編—肝疾患レジデントマニュアル—第3版
上野 文昭
1
1米国内科学会(ACP)日本支部
pp.627
発行日 2018年4月10日
Published Date 2018/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402225552
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近年,肝疾患診療の変貌が著しい.一昔前であれば,肝疾患は自然に治るか,治らずに進行するものと考えられていた.従来わが国でよく使われていた肝疾患治療薬は,その有効性に関するエビデンスが乏しく,世界的にはまったく評価されていなかった.一時期は画期的であったインターフェロンなどの抗ウイルス薬も限界は明らかであった.しかし現在は状況が一変した.特にインパクトが大きいのがウイルス肝炎の治療であり,現在では治癒が望める疾患の筆頭となっている.
このたび医学書院より『肝疾患レジデントマニュアル 第3版』が上梓された.肝疾患診療必携の書として定評のあった本書は,ようやくここにきて9年の歳月を経て新版となった.進歩の著しかったこの数年間を考えると,改訂は遅きに失したという批判もあろうが,評者はそうは思わない.書籍は医学雑誌と異なり,最新の知見を盛り込めばよいというものではない.華々しく登場した検査法や治療法が,5年程度で廃れてしまうことが少なくない.せっかく購入した書籍がすぐに役立たなくなるのは悲しい.新しい診療行為が学術報告され,十分に臨床使用され,実績と定評が確立してから成書とすべきであろう.C型肝炎に対する直接型抗ウイルス薬が出そろい,その有効性と有害性に関する評価が定着した現在が,改訂版を世に出す素敵なタイミングであったと考える.ついでに言えば,PBCの病名変更も間に合ったし,IgG4関連肝胆道疾患やNAFLDの新しい知見も含むことができた.いささか「あと出しじゃんけん」で勝っている感もあるが,その恩恵を受けるのは読者である.
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