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昨今,臓器別,領域別の専門分化が高度に進み,自らの専門分野で極めて高い診療能力を持ちながらも,ジェネラリストとしての守備範囲が狭い医師が増加している.現在,新専門医制度の発足を前に,基本領域として新設される総合診療専門医の医師像,研修プログラムのあり方が議論されているところである.“真のジェネラリスト”の医師像がいかなるものか大変注目を浴びているこの時期に,本書はそれに対する一つの具体的な回答を示す形で,絶妙のタイミングで出版されたと言えよう.
本書は,領域横断的に,基本的な手技や比較的簡素な医療機器を駆使して“手を動かし,頭を使って”初療に当たる真のジェネラリストのあるべき姿を示してくれている.精緻な画像診断や詳細な血液分析結果に頼る前に,あるいは患者に触れる前から何かを察知する能力までも研ぎ澄ますことを提唱している本書は,「当直マニュアル」などのレベルをはるかに超えた,医師としての基本的素養,哲学を伝えてくれていると言えよう.明解な図や貴重な実地臨床における写真を的確に駆使して解説し,「コツとアドバイス」に込められたエッセンスは,まさに最前線の現場でしか得られないジェネラリストたちの生の声が伝わってくる.積極的にかつ興味を持って初療に取り組む若手医師の勇気と知識,技能を後押ししてくれる本書の編者田島知郎博士(東海大名誉教授)は,米国で長く外科研修を積んだ後,日米両国で世界最高レベルのsurgical oncologistとして指導的な立場で活躍されたジェネラリストの基盤を持ったスペシャリストである.米国の医療現場の待ったなしの救急,初療で培った編者の医師としての哲学,しっかりと手を動かして初療を行うことのできるジェネラリスト育成に対する熱い思いが伝わってくる.私自身もスペシャリストとしての到達点の高さは,ジェネラリストとしての基盤の広さに立脚して決まってくると信じている.
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