特集 抗菌薬の考え方,使い方—ホントのところを聞いてみました
腹腔内感染症
腹膜炎
小林 美奈子
1
,
楠 正人
1
1三重大学大学院医学系研究科先端的外科技術開発学
pp.1030-1032
発行日 2016年6月10日
Published Date 2016/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402224227
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Question 1
S状結腸穿孔などによる腹膜炎患者の経験的治療薬として使用すべき抗菌薬の選択と用法・用量について,ホントのところを教えてください.
消化管穿孔による腹膜炎は2次性腹膜炎であり,多くの場合,腸内細菌科(Escherichia coliなど),Enterococcus属,Bacteroides fragilis,その他の嫌気性菌などの複数菌感染である.よって,これらをカバーするような抗菌薬選択が望まれる.
限局性腹膜炎など軽症から中等症までの市中発症腹膜炎であれば,セフメタゾール(CMZ),フロモキセフ(FMOX)もしくはセフトリアキソン(CTRX)とメトロニダゾール(MNZ)の併用が勧められる.日本感染症学会と日本化学療法学会が合同で発表したJAID/JSC感染症治療ガイド2014ではアンピシリン/スルバクタム(ABPC/SBT)も推奨薬剤となっているが1),本剤は大腸菌に耐性率が高くなっているため,薬剤感受性がわかっていない時点での経験的治療としての使用はあまり積極的にお勧めできない薬剤であると思われる.また,中等症までの腹膜炎ではEnterococcus属やカンジダ属に対する経験的治療は推奨されていない.
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