実践診療dos and don'ts
忘れられた常識/禁煙指導
吉岡 成人
1
1聖路加国際病院・内科
pp.2368,2413
発行日 1989年11月10日
Published Date 1989/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402222938
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一般外来で毎日のように診療をしているといかに"風邪"をひく人が多いかがわかる.一般週刊誌をにぎわす"今年の風邪の傾向と対策"もつかめてくる."今年の風邪は嘔気,嘔吐,腹痛,下痢といった消化器症状が強い"というような情報が自然に医者の頭のなかにインプットされてしまう.そうすると,全身状態が比較的良い患者が嘔吐や軽い腹痛を訴えている場合=風邪(ウイルス性胃腸炎)と診断してしまうようになる.
先日,嘔気と腹痛を訴えて17歳の高校生が私の外来を訪れた.診察したところ腹部は全体に柔らかく,心窩部に軽い圧痛があるのみであった.もちろん最終生理については確認して妊娠の可能性が無いことは確認した.本人と付き添ってきた母親には"風邪"だと思うが経口摂取が十分摂れていないようなので取り合えず点滴をして様子をみようと話した.1,000mlの点滴の後で,患者の自覚症状も落ち着いたので帰宅せようと思い,もう一度診察した.その瞬間"まずい"という思いが私の脳裏をよぎった.右の下腹部に僅かだが筋性防禦があり,反跳痛を伴った圧痛が認められたのである.緊急検査の白血球数は13,000/μl!患者と母親への説明はやりなおし.ただの"風邪"は急性虫垂炎に衣替えし,緊急手術となった.
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