今月の主題 水・電解質と酸塩基平衡
水・電解質代謝の理解のために
Na代謝調節系—腎血行動態
相澤 力
1
1東京大学医学部・第1内科
pp.2134-2137
発行日 1989年10月10日
Published Date 1989/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402222879
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体の中のNaは細胞の中にはわずかしか存在せず,大部分は細胞外液中に分布している.細胞外液中のNa濃度や浸透圧は,それぞれおよそ140mEq/L,280mOsm/Kg・H2Oになるように調節されている.したがって,体内のNa量の変化は体液でもとくに細胞外液の量の変化を意味している.細胞外液量はおよそ体重の20%であるが,その大部分は血管の外にあって組織間液を形成し,血管内にある循環血漿量は体重の5%である.細胞外液量が適切であるかどうかを直接に感知する機構は生体にはなく,循環血液量が適切であるかどうかを感知して生体は体液量の調節にあたるのである.それ故,浮腫や腹水があって細胞外液量が明らかに増えている状態でも,血管内はむしろ脱水傾向になっているため,生体は体液量が少ないと判断して循環血漿量を増やす方向に調節が行われることは,日常の診療のなかでよくみられる現象である.
細胞外液量の調節,実際は循環血液量の調節は基本的には,そして最終的にはNaの代謝調節によって行われる.腎循環が循環血液量の増減に対してどのように対応するのか,またいかなる機構によって行われるのか,が重要と考えられるが,ここでは腎循環の特徴をみるところから始めたい.
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