カラーグラフ 冠動脈造影所見と組織像の対比・4
梗塞前の狭心症と心筋梗塞
堀江 俊伸
1
1東京女子医科大学・循環器内科
pp.642-644
発行日 1989年4月10日
Published Date 1989/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402222411
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〔はっきりした狭心症状がなく,冠動脈造影施行5年 後に心筋梗塞を発症した例〕
症例 70歳,男
現病歴 65歳時の初回梗塞発症約1年前頃から寒い時や飲酒後などに胸部圧迫感が出現していたが,最近になり発作の回数が増加してきたため4月6日不安定狭心症の診断により入院した.いったん軽快退院したが,7月29日午後9時頃急に胸痛が出現し,急性心筋梗塞(下壁)の診断により近くの病院へ入院した.冠動脈造影では右冠動脈4PDに99%狭窄を認め,前下行枝Seg.6に50%の求心性狭窄を認めた(図1A).その後は経過良好であり,とくに狭心症状は認めなかった.しかし初回梗塞発症5年後に今度は前壁中隔梗塞を発症し4日後に死亡した.
剖検により冠動脈造影所見と組織像を対比検討した.冠勤脈造影上狭窄を認めない部位でも組織像では内膜の肥厚が認められた(図1B).また前下行枝Seg.6に50%の求心性狭窄を認めた部位では内膜内に粥腫(Ath)の沈着がみられ,血管壁を構成している内膜膠原線維の破綻部(矢印)に一致して血栓の形成がみられた(図1C).
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