講座 図解病態のしくみ 循環器疾患・11
リウマチ性僧帽弁膜症
石光 敏行
1
1筑波大学臨床医学系・内科
pp.162-167
発行日 1989年1月10日
Published Date 1989/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402222295
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病因
リウマチ熱は,心炎,多発性関節炎,発疹,皮下結節,舞踏病などの症状を特徴とする疾患(表1)である.この疾患はA群連鎖球菌による咽頭炎に引き続いて起こる.急性期に重篤な心炎で死亡する場合もあるが,重要なのは心内膜,とくに弁および弁下構造物に,進行性の器質的障害をきたし,その結果,弁の狭窄あるいは閉鎖不全を生じることである.リウマチ熱は,通常5歳から15歳までの小児が罹患し,6歳から8歳にかけて最も高率に発病する.第二次大戦前には12歳以下の小児の10%から15%が本症に罹患したと推定されているが,抗生物質使用の普及とともに激減し,現在都市部においては発病の報告がほとんどない.
弁膜症は,心炎を伴ったリウマチ熱患者の50%で発病後10年以内に出現し,15%では10年以上たって出現する(図1).残りの35%は恒久的な心障害を生じることなく治癒する.弁病変としては僧帽弁狭窄が最も多く,Bland and Jonesらの報告によれば,僧帽弁狭窄を有さないリウマチ性弁膜症は316例中の27例にしかすぎない1).
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