講座 肺癌診療・2
早期の肺癌を見つけるには—X線診断・1
山田 幸三
1
,
江口 研二
1
1国立がんセンター内科
pp.732-738
発行日 1988年4月10日
Published Date 1988/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221647
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肺癌のX線診断においては,肺の特異的な解剖学的特徴を理解してその読影を行う必要がある.すなわち肺は複数の異なる上皮組織を有するため,これらを発生母地とする肺癌は,多彩な組織型(扁平上皮癌,腺癌,大細胞癌,小細胞癌など)があり,各々の組織型による発生部位,進展形式,転移形態が異なる.このためレントゲン写真上も多彩な像を呈する.また肺実質の解剖学的特徴(含気のある3次元的な立体構造)から,既存の肺構造は含気の程度で自由に偏位をきたし,無気肺が存在しても周囲の肺が代償性に膨み,一見異常がないようにみえることもありうるのである.したがって肺癌のX線診断では,この組織型による各々の特徴,病変部位(太い気管支か末梢の肺胞領域か)および既存の肺構造と病変の進展との関係などによっても,各々のX線像の差が出てくることを十分考慮する必要がある.現実の臨床の場では,無気肺や多量の胸水などにより,肺内病変の分析をしにくい症例もあり,また肺野型肺癌では,その腫瘍径が小形であればあるほど(とくに1 cm以下),そのX線下での質的診断は乏しくなってしまう.このようにX線診断の限界もある.しかしプライマリケアでは,多くの場合,単純写真1枚で癌の疑いを思い浮かべるか否かで,一人の患者の運命は決まってしまうのである.
本稿ではこれら基本的なことを念頭において,日常診療での"治りうる肺癌"を見つけるポイントについて述べる.
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