一冊の本
「Biochemistry of Disease」(Bodansky M and Bodansky O, McMillan, New York, 1939)
柴田 進
1
1川崎医科大学
pp.1729
発行日 1987年9月10日
Published Date 1987/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221119
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- 文献概要
「学校を出て内科医局に席を置く様になって間もなく私は打診・聴診及び触診など古い伝統的な診察法に頼り過ぎる自分の診療態度に不安と不満を感じ,何とかして受持の患者をもっと丁寧に調べ自分自身も心がやすまり,患者にも信頼される医師になりたいと考えた.しかしその当時は一体何を調べたらよいか見当がつかない有様だったし,現在あれから十何年もたっているのに他の人から"こんな患者はどう検査したらよいでしょうか"と相談を持ちかけられた時,即座に適切な返事ができなくて色々本や雑誌をひっくりかえして考えこむ始末である.この書物は斯の様な悩ましい私の心境と立場を切りぬけるため折にふれ書き集めたノートを整理充足したものであるから,いま"臨床生化学入門"と名づけて世に送り出される姿を見ると本当に愛しい気持になる」
これは1952年に私が金芳堂(京都)から出して貰った書物の自序の一部でありますが,それを読み直してみて,自分はいま思いがけない学問の領域に迷い込んだものだと感慨に打たれています.
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