今月の主題 膠原病診療の実際
膠原病理解のための臨床免疫学
免疫複合体(Immune Complex)
吉田 浩
1
1福島県立医科大学・臨床検査部
pp.1352-1354
発行日 1987年8月10日
Published Date 1987/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221034
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血清病とArthus現象
1891年,北里とBehringによる血清療法が始められ,破傷風やジフテリアなどの治療に,抗生物質の開発まで盛んに用いられた.そのなかで,蕁麻疹,関節痛,尿蛋白陽性,リンパ腺腫脹などを呈す症例が見いだされ,これは血清病serum sick-nessと名付けられた.本疾患の発現機序は治療に用いられた抗血清中の異種蛋白が抗原となり,それに対して生成された抗体が血中で結合し,免疫複合体immune complexが形成され,それが腎,皮膚,関節などに沈着し,それぞれに病変を引き起こすものである.原因としては異種血清(蛋白)や薬剤などがあり,今日,前者が問題となることは少ない.
1903年,Arthusは異種抗原で免疫したウサギの皮内にその抗原を注射すると,注射局所には数時間後,発赤・腫脹が認められ,1〜2日後には壊死が形成されることを観察した(Arthus現象).本現象はimmune complexが注射局所で形成され,補体,好中球,血小板などが反応し,種々のmedi-atorsやlysosomal enzymesの放出が起こり,それによって組織障害が引き起こされるものである.
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