一冊の本
「ヨブ記」—浅野 順一,岩波新書,1968年
吉倉 広
1
1東京大学医学部・細菌学
pp.539
発行日 1987年3月10日
Published Date 1987/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220872
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神の人が主の命によって,ペテルの町に現われたが,「そこでパンを食べ水を飲み,又来た道から帰ってはならない」と命ぜられていた.ところが,そこに住む年老いた預言者が神の人と共にパンを食べようと考え,立ち去った神の人を追いかけ神の人をさそう.勿論断わられる.老預言者はそこで次のように言う.「わたしもあなたと同じ預言者であるが,天の使が主の命によってわたしに告げ,『その人を一緒につれ帰り,パンを食べさせ,水を飲ませよ』と言った」と.その人は彼と共に引き返し,その家でパンを食べ水を飲み立ち去る.神の人は,道でししに会い裂き殺される.
我々は小学校から大学を出る迄ずっと教育を受けて来た.知識の伝達はその中で大きな役割を果たす.大学でも講義を聞きノートをとる.試験を受け合格する.或いは追試験を受ける.知識とはそれを与える側にとって見れば,その人の血であり肉であるものを学生に伝えるということである.血であり肉である伝達さるべきものは,その人の原体験に基づくものでなくてはならぬ.
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