今月の主題 糖尿病診療の現況
糖尿病の治療と患者指導
インスリン頻回注射法の実際
松田 文子
1
1自治医科大学・内分泌代謝科
pp.42-43
発行日 1987年1月10日
Published Date 1987/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220760
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糖尿病の合併症の進展防止には,血糖値をできるだけ正常範囲に維持することが治療の当面の目標となる.NIDDMでは食事療法や経口剤,または中間型インスリンの1日1回注射でもこの目標を達成しうることが多いが,IDDMでは中間型インスリンの1〜2回注射では不可能に近い.またIDDMでは血糖の動揺が激しく,高血糖と低血糖をくり返し起こし,一定のインスリン量では治療のできないことが多い.
IDDMに対し,できるだけ血糖値を正常に保つように,速効型,中間型,持続型インスリンを組み合わせて1日に2〜4回の頻回注射で行う治療法(頻回注射法:Multiple Injection Therapy)は,CSIIや人工膵島と同じく,インスリン強化療法と呼ばれている.従来の1回注射は,IDDMの治療としては決定的な限界があり,良好な血糖コントロールを得ることはまず不可能であり,頻回注射法は最近IDDMの通常のインスリン治療法となってきた.血糖の変動の激しい不安定型IDDMや,より厳格なコントロールを必要とする妊婦においては,日々の血糖値に合わせてインスリン量の調整が必要であり,頻回注射法に加えて,血糖自己測定の結果に基づくインスリンのスライド方式やインスリン持続注入法による治療も行われる.
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