今月の主題 狭心症—各種治療手段の適応
新しい治療法の試み
血漿LDL除去療法(LDL-apheresis)
横山 信治
1
1国立循環器病センター研究所
pp.1560-1564
発行日 1986年9月10日
Published Date 1986/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220538
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高コレステロール血症と虚血性心疾患
虚血性心疾患の発症にとって,高コレステロール血症が主要な危険因子の一つであることが知られるようになってすでに久しい1).この間,西欧諸国,とくに米国においてはこの問題が国家事業のひとつとして取り組まれ,最近20年程の間に米国人の血漿コレステロール平均濃度は20mg/dl以上低下,虚血性心疾患による死亡率は15%以上の特異的低下をみた.一方,臨床的なテーマとしての高コレステロール血症の治療の意義については,長くあいまいなまま希望的観測に基づく治療が続けられていたが,1984年米国リピドリサーチクリニック(LRC)17施設による10年以上にわたる虚血性心疾患一次予防試験の結果が発表されるにおよび,ようやく科学的かつ定量的根拠が与えられるに至った2).図1に,その結果より概算した高コレステロール血症の治療による虚血性心疾患罹患率の減少,すなわち臨床的予防効果を,Framinghum study1)の長期追跡における発症率と対比して示す.中年以後の男子においては総コレステロール値220mg/dlが危険率増加の閾値であり,治療による発症率減少の限界値であるLDLコレステロール150〜160mg/dlに対応している.これによって総コレステロール値300mg/dlの患者を220mg/dlまで下げれば将来7年間における罹患の確率は10%から3〜4%にまで減少することがわかる.
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